毎年度末のこの時期に開催する本学の「作品展」は、卒業・修了生のみならず、一回生から毎年、その一年間の研鑽の成果を発表する特色がございます。学生たちには、作ること、描くことに加えて、自分の作品を展示して観ること、観られること、そして仲間の、他専攻の、先輩や後輩の作品を観ることを通して学ぶべきものがあると考えているからです。

2019 年は平成から令和に元号が変わり、日本の新しい時代の幕開けの年となりました。「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」との希望が託された時代の始まりに、 京都市立芸術大学の学生たちは、この一年間も勉学と制作に励んで参りました。世界に目を向けると、頻発する自然災害などを契機に、若者たちが地球温暖化やオゾン層の破壊などの地球環境問題に反応した一年でもありました。本学で美術を学ぶ学生たちもまた、時代の様々な変動を敏感に肌で感じながら、芸術と社会とのつながりを真摯に考えつつ、制作に研究に打ち込んできました。

作品展に展示される一点一点は、特に卒業生・修了生にとっては学生時代の集大成であると同時に、ここから羽ばたいていく彼ら彼女らのスタート地点としてあります。それぞれの目的に向かっていく中で困難や試練に晒された時、京都芸大で制作・研究にかけた真剣な思い、ひたすら打ち込んだ時間、そして成し遂げた体験が、自信になり、背中を押し、立ち向かう勇気になることを願っています。そして一人でも多くの皆様に作品をご高覧いただき、この時代の学生たちが何を思い、何を伝えようとしているか、感じていただけたら幸いです。

最後になりましたが、学生たちの成長を見守り支えてくださった京都市民の皆様に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。

京都市立芸術大学学長 Tamame Akamatsu