大学院美術研究科 絵画専攻日本画 森萌衣さんインタビュー
日本画専攻修士二回生の森萌衣さんに普段の制作活動や日本画を描き始めたきっかけについてお話しを伺いました。
森さんが描かれる女性がとても好きです。誰かモデルはいますか?
モデルは基本いません。様々な人の綺麗だなと思ったパーツを組み合わせて人物を描いています。困った時は自分の顔を参考にするときもあります。
日本画の画材はリスペクトして丁寧に扱いつつも、色白で切れ長の日本画らしい女性像はあまり意識していません。今までにない面白いものができたらいいなと思います。
私は関わってくれる人の気持ちを考えて客観的な視点で絵を描いています。見た人が絵の中の女性に感情移入してくれたらいいなと思います。
細かくて繊細なモチーフを描く時のモチベーションはありますか?
描けば描くほど絵が良くなるから、細かい作業はすごく楽しいです。逆に、完成が見えないようなぼんやりした大きな作業は苦手です。
わたしは画面全体を徐々に最終段階までもっていく様な描き方ではなく、モチーフが一つずつポンポンとできていく様な描き方をします。たとえば真っ白の状態から鳥を完成の80%くらいまで一気に集中して描き切ります。後から観るとそれは80%じゃないときもありますが、そのとき自分が考えた完成まで一気に近づけたいと思っています。途中でやり直せない描き方なので、事前に計画して描きはじめます。
森さんはとてもタフな印象です!なにか体力作りをしてますか?
元々アウトドアが好きだったこともあり、最近本格的に登山をはじめました。この前は登山規制が解除されたばかりの御嶽山に一泊二日で登りました。
日頃引き籠もっている反動か、出かけるときはとことん出かけます。旅行も出来るだけ長く遠くへ行きたいです。
いつ頃から絵を描くことを意識し始めましたか?
幼稚園のときだと思います。ひらがなドリルの、各ひらがなにちなんだ絵を描くマスにとてもこだわっていました。正方形のマスにウサギを緻密につめこんでみたり、物語風にして描いていました。それを褒めてもらえたのが嬉しかったです。
小学生のときの自分の作品を見返すと、そんなに色のないお花だけ描いた絵があったりして、渋い印象を受けます。そのころ好きだったことを今しているのかもしれません。
日本画をはじめたのはいつですか?
高校生のときです。始めは漆工をしたいと思って美術系の高校に入学しました。高校一年生でいろいろな専攻の実技を体験したなかで、一番上手くできなかったのが日本画で鳥を描いた作品でした。
その後、学外で日本画の作品をみて画材の可能性に衝撃を受けました。日本画といえばおじいさんが水墨画描いてるような…そんなモノクロのイメージでした。そして自分が上手く描けなかったことへの悔しさも倍増して、最終的に高校二年生で日本画専攻を選んで本格的にはじめました。
他の画材で絵を描くことはありますか?
この前、壁にアクリルで絵を描きました。伸びるから扱いやすいけど、ここで吸い込むかなと思うところで弾いたりして苦痛でした…。
上手な人の絵をみてこうなりたいなって思うのが日本画の画材です。高い絵具を練り合わせて、少しづつ大事に塗るような地味な工程が意外と好きです。
卒業制作はどんな作品を考えていますか?
ノープランです!今描いてる作品が来月締め切りでヤバいです。間に合うかな…
制作のスピードは早い方ですか?
前日まで真っ白だった画面にいきなり人がバンって現れるような描き方なので、担当の先生にはびっくりされます。
私はレースなど細かい描写が好きですが、それだけではなかなか枚数が仕上がりません。なので大学院では余白の研究をしています。余白と密度が高いところの差をつけるように意識してから、ある程度大きな絵でも早く仕上がるようになってきました。
これからしたいことを教えてください。
画家として生活するのは相当難しいことだと思いますが、いかに続けていくかを今は考えています。卒業後全部自分で考えて制作を管理していくためにも、集中して短期間で仕上げることができるように努力しています。
自分のうちに篭って描く方でもないので、登山などでインプットしつつ活動していけたらいいなと思います。展示の予定は今のうちからいろんな人とお話ししたりして進めて、なるべく短期間で小さくてもいいから目標を作って、そこに向かって頑張ってまたもうちょっと頑張ろうって感じで活動を繋げたいです。