No.002

Sae Shimizu清水 彩瑛

大学院絵画専攻油画

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大学院美術研究科 絵画専攻油画 清水彩瑛さんインタビュー

今回は2019年9月16日−9月21日ギャラリーeyesにて行われていたグループ展「Tourbillon 17」を訪ね、普段の制作活動や専攻についてのお話を伺いました。

普段の制作について教えてください。

日常にあるものをテーマ・モチーフに描いてるんですけど、昔友達からもらった思い出深いものとかではなく、普段何気なく過ごすなかで、バイト先に行く道の途中で見つける家とか道具とか…そういうあんまり意識してない、日常の中でみつける、ふっと感じた愛おしさみたいなものをテーマに制作しています。

毎回モチーフはその時々に見つけるのですか?

そうですね。それは写真を撮ったりしているわけじゃなくて、ドローイングとかで。その時々にこれかな?って。線でドローイングをして、それを参考に絵を描いています。

普段からキャンバスは、こういう仕様ですか?

学部生の時にキャンバスの側面が見えるのがずっと気になっていて、物質感というか、けっこう「あるな」って感じがして。小さい作品とかは特に“もの”感が気になって画面の中に集中できなくて、それが自分は描くときにすごく苦手だなって、ずっと思っていました。それを克服するのに始めたことではあったんです…

今の形態は理想的ですか?

現実的には厳しいですがフィルムよりもっと薄いもので、もっと前に出てきてほしいってずっと思っています…自分が見たいものの感覚により近いものできないかなって悩みながら、今はキャンバスを、こう、貼ってますね。

これから素材が変わる可能性はありますか?

そうですね。先の話なのでどうなっていくのかは自分でもわかりませんが、追々もっと良いキャンバスに会えたらいいですね。

《とろけるかばん:かんかくの記録c-1〜3》2019年制作/綿布キャンバスにパステル、透明水彩、アクリル絵の具、油彩

過去の作品で気になったのは《膨張する家》のシリーズで、今回よりも大きなモチーフですね。何か違いはありましたか?

そうですね。制作展の時は絵だけじゃなくてぬいぐるみも展示してたと思うんですけど、家ってモチーフとしてすごく大きいじゃないですか。手元に一回ドローイングの前にワンクッション、あの家に出会った時に一緒に見たエフェクト付き縮小版モチーフみたいなのが欲しいと思って、その日の天気とか時間帯とかそういうのを想像して立体で、置き換えたりしました。

ぬいぐるみを経て絵に?

家のときはそうでしたね、規模が大きかったので。今はもうドローイングから直にやってます。絵のモチーフになってるのは“家のぬいぐるみ”だったので、ぬいぐるみを描いてました(笑) ぬいぐるみを通して家を描いてる感じです。
ちなみにあの家は散歩しててみつけました、大学近くの住宅街って面白い家がいっぱい建ってて(笑)、ちょっと行ってみてほしい。なんか富裕層の方が住んでるのか、こだわりの家が多くて、そういうおうちが多い中で結構シンプルな方ではあったんですけど、日当たりがめちゃくちゃ良くて…夏のものすごい日差しが強いときに見たら反射がすごくてぼやーっとして見えて、良いなと、「これはかわいいのでは?」って(笑)

ひっかかりがあったんですね。

ちょっと良いなって思えて、普段は絶対通り過ぎて見ないものだなって思ってそれをドローイングで残して、あと文字にも起こしてて。いろんなインプットとアウトプットを繰り返すみたいな…

様々なアウトプットを経て最終的にたどり着いたのが絵画という感じですか?

そうですね。絵画で見たいと思うので、最終的に今は絵画にしてます。

《膨張する家》のぬいぐるみ

最初は彫刻もされていた?

学部の時に彫刻基礎と油画基礎を取って、いろいろしたかったんです。全てのことがしたい(笑) ほんとは工芸とかもしたい!って思ったんですけど専攻の壁があったので…とりあえず美術科の中で一番いろいろできる専攻を二つ選ぼうと思って。

油画の方が彫刻よりも合っていましたか?

私自身が立体を見るときに一視点から見すぎて、立体見るの下手で(笑) 一回「あっ」って思ったらそこから動けなくて。自分が制作してても一視点の立体ばっかり作っちゃうとか。クセなのか、私もまだよくわかってないんですけど…それで一視点から見る何かとかだったら油画から行った方がいいのかな、って思って。今は油画専攻で絵画、もうほんとに一視点から見るもの、に限定して作ってます。

画材はパステルや透明水彩などの油絵具じゃないものも使っていらっしゃる?

高校とか大学の初めの方は油絵の具を触ることが身近だったんですけど、学部の三回ぐらいに透明水彩を触り始めて、それがすごい自分にしっくりきて。水彩の方がもっと触れるかもしれない、と思って始めたことがきっかけで、水彩始めたんだったら思い切ってほかの画材も入れてもいいんじゃないかと思って(笑) 今回使ってるのはパステルと透明水彩とアクリルと油もちょっと…割合はまだちょっと試行錯誤中です。

卒制はこれからまた新しい作品を作っていかれるんですか?

作ります、まだちょっと練れてないけど。やっぱり四角い中でできることは続けて、最後までやってみようかなとは思ってます。

作品展自体が学内で行われていることについてはどう思いますか?

理想だったら…「こうみせたい」みたいな展示の意志?がいっぱい反映される場所になるといいなって思います。だけど、そこはやっぱり自分たちだけじゃできないことの方が多いと思うので…市美のときも、ひとりあたりの範囲も決まってたし、大きさの規定もあったし、考えたら、まあ壁の広さや光の当たり方が変わったぐらいかもしれないけど。パーテーション立てたり箱で使えるところもあるので展示の自由度は高くなったかなとは思いました。そういう意味では学内展のほうが生き生きとできるなと思います。
油画は前期展とどう分けるかが課題かなと思いました。展示の仕方は、ほぼ一緒なので。院生は前期展と制作展を差別化するために、今年はオープンアトリエをしました。普通の展示とはちょっと違う、学内の人とも交流できる機会を持つとか。そういう風に前期展の方を変えるっていうことやってましたね。

専攻の特色みたいなものはありますか?

自由ですね!自由だし、みんな院生も学部生も関係なくやってることがみんな違って面白いっていうのがいいなって思いますね。前期展とか制作展で学部生の展示とか見て「これおもしろい!」って、楽しいですよ。専攻関係ないかも…(笑)

ゼミではどんなことをされていますか?

みんなでやってみたいね~って事を出していって、実験したりお話したりします。最近は「他人が過ごした一日を再現する」っていうのをやりました。一昨年のゼミ生が出した提案で…ちょっとやってみたいことある?みたいな感じで。お互いが再現できそうな範囲の、ある一日を記録して…

自分が実際に体験した?

そうそう。時間と、どこで何したかっていうのを全部記録して、その説明をわーっと喋って、あみだくじで誰の一日を過ごすか決めて、当たった人の生活をしてみました。答え合わせというか、発表会がめっちゃ面白くて(笑)それぞれの日常を過ごすんですけど、自分が再現できない範囲はどう置き換えたかとか、やろうとしたけどできなかったとか、やってみたら違うことに引っ張られてもうちょっと長く続けちゃったとか、そういう話が結構面白いなと思いましたね。

やっぱり全く同じには過ごせないんですね

私はすごい無茶な一日を後輩の子にあてちゃって。朝寝坊して7時15分に起きて、30分のバスに乗るっていう(笑) そのあと会社説明会2時間。そのあと散歩しながら美術館に行って、帰ってきてドローイングして寝るっていう…その子は就活の年じゃないけど、ちゃんと会社説明会行ってきました~って、言ってました。私は一社の説明会に行ったけど、彼女は合同説明会に行ったら説明会が面白くてあと2時間くらい居れた、みたいな話が印象的でした。就活当事者になるとしんどいですけど、別に受ける予定じゃない会社の話聞きながら何物にもならない自分が、スーツを着て周りと同じように、うんうんなるほどそうなんですね!ってみたいな態度で聞いてるのが面白いって(笑)

他にはどんなことを?

いろんなことをしてます。最近関心持ったことの話とか、気になる展示を見に行ったり、去年とかは、油絵を100枚描く…でも、ひとりじゃないよ。みんなで合わせてね。みんなでモチーフを決めて、他人が描いたかのような、自分が描いたと思えない描き方で油絵をいっぱい描きました、誰かの描き方を真似してみたりもしました。

そういったことは定期的にされてるんですか?

油画の院生は毎週一回ゼミがあるので。その時間に、次やりたいことの話をしながら、今やってることを同時進行でやるみたいな(笑)ゼミは担当教授によって、全然違うことしてます。油画は先生と生徒の距離が割と近いのが、いいかなって。先生も含めてみんなで面白がってやるのが、いいな~と思う。それがゼミの醍醐味かな~って思います。

お話、ありがとうございました!