工芸科染織専攻 千本木晴さんインタビュー
染織専攻4回生の千本木晴さんに普段の制作活動や専攻についてお話を伺いました。
普段どのような制作をしていますか?
最近は『人と空間をつなぐテキスタイル』をテーマに制作しています。インテリアのカーテンでも鑑賞用のインスタレーションでもなく、その間を作ろうとしています。それがあることによって暖かさや涼しさを感じてほしい。そういうことができたらいいなと思っています。
作品のイメージはどこから?
日々の生活の中でなんとなく気になったものや空気感、光などからヒントを得てそれらを自分なりのかたちに落とし込みます。特に晴れてる日の空や建物に当たる光、窓から入ってくる光の感じが好きです。
今はどんなことをしていますか?
卒業制作のための案を出している状態です。制作のための写真やスケッチが光に関するモチーフが多いので、最初から漠然と光をテーマにしようと思っていました。
展示場所は染織棟の階段を登ってすぐの所にする予定です。そこを光いっぱいの場所にできたらいいなって思っています。今は描いたモチーフを貼ったりして試しています。
空間を生かす作品なんですね。
来年度以降の作品展でまた美術館で展示できるようになっても、私は大学での展示を選ぼうかなと考えています。
「何かの気持ちを作品に込める」というより「この場所にこの作品を置きたい」という気持ちの方が強いのではないかと思います。
色はどうやって決めますか?
色は好きな色です。絵の具とかクレヨンとかで色を試してから染料を作ります。初めから計画を立ててその通りに進めていくことが苦手なので、「いいかもいいかも…できた!」って感じでいろいろ試しながら制作しています。
ひとつの作品の作業時間は?
今、それについて悩んでいます。シルクスクリーンは版を作るのは時間がかかるけど布に向かう時間は短いです。同じ図でも筆に染料をつけて手描きすると布に向かう時間が長いです。今どちらが自分にとって重要なのか悩んでいるところです。手描きが良い場合もあれば、ちょっとくどいかなって時もあります。
工芸といえば手仕事という印象がありますが…
「最終的に作品として見せたいのがものでなく空間なら、布に絵を一つ一つ手描きする必要はあるのか」と先生に聞かれたことがあります。でも自分は工芸のそういう手仕事が好きだから悩んでいます。作りたいなって思うから…
どうして染織専攻に入ったんですか?
高校生の時に実家の近くの美術館に皆川明さんのミナ・ペルホネンの展覧会を観に行きました。マネキンに服を着せるだけじゃなくて大きい生地を使ったインスタレーションも展示されていました。それを見て面白そうだなと思ったことがきっかけです。でも工芸基礎の陶磁器も楽しかったので、2回生の専攻の選択は迷いました。最終的には実家に帰った時に初心に戻って染織専攻を選びました。
染織専攻ではどんなことをしますか?
2回生のときに基礎として織、染め、テキスタイルの課題をします。1ヶ月スパンくらいで全ての技法を体験して、12月頃からは作品展にむけて自由制作をはじめました。3回生は前期展「着るもの展」と後期展がありました。
基礎で体験した中からもうちょっとやりたいなっていう技法を選んで制作しますが、あまりはっきりと専門を決めず自由な雰囲気です。私は臈纈染とシルクスクリーンが多いです。
臈纈染って何ですか?
熱で溶かした蝋を布にのせて、染料がじわーっと広がるのを塞きとめる伝統的な技法です。最後は業者さんに蝋を全部洗い流してもらいます。
千本木さんにとって染織の魅力はなんですか?
変幻自在なところです。服にもカーテンにもなるし、敷くこともできます。
染料で布を染めると繊維自体の色が変わるので、絵の具を紙に載せる絵画よりも二次元的だなと思います。だからどのように奥行きを持たせるかが面白いところです。最近は、濃い色を染めるほど布の透明感が増すことがすごくいいなって思います。でもまだうまく使えない素材の面白さです。
染織って奥が深い!布自体から作ることもできるので、どこから制作をスタートするか決めるのも難しいです。
これからどんな制作をしたいですか?
その場所とそこにいる人を繋ぐようなものを制作したいです。暮らしや生活感も大事にしたいし、「誰もが一日一回は布に触れる」ということにも興味があります。服を作るのも好きなので上手く関連できたらいいなと思います。