No.004

Yu Uno / Ryu Jeyoon宇野 湧 / リュ・ジェユン

大学院工芸専攻陶磁器

LIST PAGE

大学院美術研究科 工芸専攻陶磁器細目 リュ・ジェユンさん 宇野湧さんインタビュー

陶磁器細目修士1回生のリュ・ジェユンさんと宇野湧さんに普段の制作活動や陶磁器の魅力についてお話を伺いました。

どのような作品を制作をしていますか?

リュさん:
僕は韓国人としてここへ留学して、自分のアイデンティティや「韓国という国は?日本という国は?」ということを考えるようになりました。今はそういうことに向けて制作しています。

宇野さん:
陶土という素材や、焼成という技法を扱って制作しています。陶磁器専攻ならではの表現方法を用いています。

どうして京芸の陶磁器専攻(細目)に入ろうと思ったのですか?

リュさん:
僕は高校でロクロや器のことを勉強して、大学で造形物やオブジェを勉強しました。その後、大学で学科教員のような仕事をしました。院生になりたいなと思っていたけど、そういう仕事をしていると大学の裏を見ちゃうじゃないですか…。だから他の国で勉強した方がいいんじゃないかと思って、色んな外国の大学を探しました。
2年前の夏休みの少し前、京芸出身の韓国の先輩のお勧めでここへ見学に来ました。結構古いものが多い環境でも必死にやっている学生を見てすごく熱意を感じました。僕はここへ来て自分の周りの全てを変えたいと思ったんです。

宇野さん:
手で何かを作ることが好きで、レゴブロックを子供の時からしていました。中学3年生の時に美大芸大に行きたいなと思って
いて、自由度のたかい高校に入学したあと、京芸を受験することを決めました。
1回生後期の工芸基礎で漆工・陶磁器・染織の授業があるんですけど、陶土を手で成形する「手びねり技法」で作品を作ることが楽しいなと思って、陶磁器専攻に入りました。

陶芸の技法や素材の魅力って何だと思いますか?

リュさん:
僕が感じたのは偶然性です。作家の手によるものじゃなくて、窯から何が出てくるかわからない…そういう気持ちです。それは結構アナログ的ではないでしょうか。
例えばフィルムカメラで撮って現像するまでの楽しさがありますよね。それと同じように自分が頑張って作ったものがどうなっているのかを待ってる楽しさです。

宇野さん:
同感です。生の土が持つ表情と、焼いた後に持つ表情はもう全然違っていて。性質が変質することが好きですね。
あと絵画とかと比べて、陶芸の作品は保管しにくいよね、めっちゃ。搬入しづらいところとか。割れ物ってところもちょっとかわいくない?愛らしいというか。

リュさん:
なんとなく分かる気がします。そういう大変なこととか、やりづらいことがあるからもっともっと好きになる感じもあります。
でも土で作れないものはないんじゃないかな、とも思うんです。作ろうと思えば何となくできます。めちゃくちゃ失敗してやりづらくても不可能ではない。そういう自由もあるし、だから好きだなって思います。

陶磁器専攻(細目)は、器という文字が入っていますね。器についてはどう思いますか?

リュさん:
僕は器の美しさを感じるのが結構遅かったと思います。高校では技術的な正しさを教えてもらって器を作っていたけど、どんな魅力があるかは知らなかったです。忙しい時とかちょっと貧乏な時の料理は効率的なことが重要じゃないですか?フライパンとかからそのまま食べたり。
でも大学の学科教員になってちょっとずつ自分の生活が変わりました。ちょっといいものを料理して、せっかくだからちょっといいお皿で食べようとしました。こうやって器を好きになるのか、と思いました。

宇野さん:
器は工芸ということ以前に人の生活に結びつくものなので、陶芸でオブジェとかを作るよりも、人々の暮らしに馴染みやすいし、実際に売り買いも多く行われている。そういう人の営みに沿う作品が作れるのはすごく良いことだと思います。

今年度も主に大学の構内で作品展が行われます。2年前までは京都市美術館でした。学内での作品展についてどう思いますか?

宇野さん:
学内は展示場所の自由度が高いです。幅広い表現をしたい人が満足のいく展示をすることができるので、学内の作品展はいいと思います。僕もそうです。壁に穴開けたりとかは美術館でできないし。アクセスは美術館の方がいいけど…。

リュさん:
同じことを考えていました。僕は去年の作品展で陶磁器専攻の学生がご飯を食べたり寝たりする部屋に展示をしました。すごく楽しい経験でした。
でも人はあんまり来なくて…。美術を学ぶ人たちにとって制作も重要だけど、たくさんの鑑賞者と話すこともすごく重要だと思います。

宇野さん:
ホワイトキューブじゃない場所とか、水が使えたりとか…そういう空間で展示できるのは僕にとって嬉しいことです。

これから作品展に向けてどんな制作をしたいですか?

リュさん:
韓国の大学院生は、学部でしていたことをずっと続けて研究する人が多い印象です。僕はそれが嫌でした。なのでテーマは毎回変えています。
その中に共通点がないかなとよく考えてみると、やっぱり自分のアイデンティティがありました。なので今回はもっと自分のなかに目を向けて制作しようと思っています。
僕が一番長く時間を過ごす場所は自宅の部屋です。14か15年ぐらい一人暮らしをしてるけど、部屋に入った瞬間の孤独感や休む時の安心感とか…結構いろんな感情がある。部屋とそこで感じる感情についての制作をやってみたいなと思っています。

宇野さん:
そう。ここでも同じ作風を続けるべきみたいな空気を感じているけど、僕もそれには賛同できなくて。やりたいことはその時々によって変わるので、一番近い発表の機会に向けてその時に思っている事について作品を作るスタイルがいいです。
焼くと硬くなったり割れ物扱いになる焼き物の特性について、前期とはまた違った表現方法で作品発表したいです 。

何か制作の息抜きや趣味とかありますか?

リュさん:
趣味といえるものは料理です。家で一人でつくって自作のお皿に入れて食べるっていうのが趣味ですね 。

宇野さん:
新しい体験がたぶん趣味です。
食材を新しく組み合わせて、見聞きしたことのない料理を食べてみるとか。この前、おじいちゃんに蕎麦をもらったんですけど、そのそば湯を日本酒と合わせて熱燗にしてみたらめちゃめちゃ美味しい。

リュさん:
うん。いけるとおもうよ。

宇野さん:
想像したことある?

リュさん:
ない!(笑)

宇野さん:
分からないものを組み合わせてみる。そういうのが刺激になります。

お話ありがとうございました!